【製品設計が左右するScope3削減】LCAで読み解くカテゴリ11(販売した製品の使用)対策ガイド

Scope3のカテゴリ11(販売した製品の使用)は、多くの製造業において排出量の大部分を占める重要な領域です。このカテゴリの削減には、製品設計段階でのアプローチが決定的な役割を果たします。LCAを活用することで、製品ライフサイクル全体の環境負荷を定量的に評価し、効果的な削減策を導き出すことができます。本記事では、カテゴリ11の算定方法から、LCAを用いた評価、製品設計での削減アプローチまで、実務担当者が押さえるべきポイントを解説します。

Scope3カテゴリ11が注目される理由と製品設計の関係

Scope3のカテゴリ11は、販売した製品を顧客が使用する際に発生する温室効果ガス排出を対象としており、製品の種類によっては企業の排出量全体の中で最大の割合を占めることがあります。特に、家電製品、自動車、産業機械など、使用段階で電力や燃料を消費する製品では、製造段階の排出量を大きく上回る排出が使用段階で発生します。例えば、エアコンや冷蔵庫では、製造時の排出量の10倍から20倍もの排出が使用段階で発生することも珍しくありません。このカテゴリ11が注目される理由として、まず投資家やESG評価機関が製品の環境性能を重視するようになったことが挙げられます。CDPやSBTiでは、カテゴリ11が重要な排出源である企業に対して、削減目標の設定と具体的な施策の実施を求めています。また、欧州を中心にエコデザイン規制が強化されており、製品の環境性能が市場参入の条件となるケースが増えています。製品設計とカテゴリ11の関係は極めて直接的です。製品の消費電力、燃費、使用時間、耐久性といった設計段階で決定される要素が、使用段階の排出量を左右します。つまり、設計・技術部門の意思決定が、企業のScope3排出量の大部分を決定づけることになります。

カテゴリ11の算定方法と精緻化のポイント

カテゴリ11の算定は、直接使用段階の排出と間接使用段階の排出に分けられます。直接使用段階の排出は、自動車の燃料燃焼のように製品の使用時に直接温室効果ガスが発生するものを指し、間接使用段階の排出は、電気製品のように電力や熱を使用することで間接的に排出が発生するものを指します。基本的な算定式は、「販売台数×製品寿命×年間のエネルギー消費量×エネルギーの排出係数」となります。精緻化のポイントとして、まず製品寿命の設定が重要です。法定耐用年数ではなく、実際の平均使用年数を使用することで実態に近い数値を算出できます。次に、使用シナリオの設定です。製品がどのようなモードで、1日何時間使用されるかという想定は、排出量に大きく影響します。カタログ値だけでなく、実使用データや顧客アンケートなどを活用して現実的なシナリオを設定します。さらに、販売地域の電力排出係数を考慮することも重要です。同じ製品でも、再エネ比率が高い国で使用される場合と、化石燃料依存度が高い国で使用される場合では、排出量が大きく異なります。

LCA(ライフサイクルアセスメント)で排出構造を可視化する

LCAは、製品の原材料調達から製造、流通、使用、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体における環境負荷を定量的に評価する手法です。カテゴリ11の削減を検討する際、LCAは排出構造を可視化し、削減ポテンシャルの高い領域を特定するための強力なツールとなります。LCAを実施することで、製品ライフサイクルの中で使用段階がどの程度の割合を占めるかを明確にでき、設計改善の優先順位付けが可能になります。具体的な手順としては、まず評価対象とする製品のシステム境界を定義し、各段階におけるインプット(資源、エネルギー)とアウトプット(排出物)のデータを収集します。使用段階のデータについては、消費電力や燃料消費量、メンテナンス頻度、消耗品の交換などを考慮します。収集したデータに基づいて、温室効果ガス排出量(CO2換算)を計算します。使用段階の排出量計算では、使用場所の電力排出係数や燃料の排出係数を乗じます。製品寿命については、平均的な使用年数を設定し、その期間の累積排出量を計算します。LCAの結果は、製品設計の改善点を特定するために活用されます。

製品設計でScope3カテゴリ11を削減するためのアプローチ

製品設計によるカテゴリ11削減には、複数のアプローチがあります。第一のアプローチは、エネルギー効率の向上です。電気製品では、高効率モーターやインバーター制御、断熱性能の向上などにより消費電力を削減します。自動車では、軽量化や空力性能の改善、パワートレインの効率化により燃費を向上させます。第二のアプローチは、電化と再エネ対応です。従来ガソリンや灯油を使用していた製品を電気駆動に変更し、さらに再エネ電力での使用を前提とした設計にすることで、使用段階の排出を大幅に削減できます。第三のアプローチは、製品寿命の延長です。耐久性の高い部材の採用、モジュール設計による部品交換の容易化、アップグレード可能な設計により、製品を長く使用できるようにします。製品寿命が延びれば、同じ機能を提供するために必要な製品数が減り、結果として製造段階も含めた総排出量が削減されます。第四のアプローチは、使用最適化機能の搭載です。AIやセンサーを活用して使用状況を学習し、無駄なエネルギー消費を自動的に抑制する機能を組み込みます。これらのアプローチを実現するには、設計の初期段階からカテゴリ11削減を目標に組み込み、LCA評価を反復しながら設計を最適化するプロセスが必要です。コストとのバランスも重要であり、削減効果と追加コストを定量的に評価しながら設計判断を行います。

LCA結果を活かした継続的なScope3削減の進め方

LCA評価を単発の取り組みで終わらせず、継続的なScope3削減につなげるための仕組み作りが重要です。まず、LCAデータを設計開発プロセスに統合します。新製品開発のゲートレビューにおいて、LCAによる環境評価を必須項目とし、目標とする削減率を達成しているかを確認します。次に、LCAデータベースの整備と更新を行います。製品に使用する部材やエネルギーの環境データを蓄積し、設計者が容易に参照できる環境を整えることで、効率的な環境設計が可能になります。また、LCA結果をマーケティングや顧客コミュニケーションに活用することも有効です。製品の環境性能を定量的に示すことで、環境意識の高い顧客への訴求力が高まり、低炭素製品の販売拡大につながります。さらに、サプライヤーとの連携も重要です。使用段階の排出削減に寄与する高効率部品や新素材の開発をサプライヤーと共同で行うことで、削減の可能性を広げることができます。定期的にLCA評価を見直し、技術の進歩や市場の変化に合わせて評価基準や削減目標を更新することで、持続的な削減活動を推進します。

まとめ

Scope3カテゴリ11の削減は、製品設計の革新によって実現されます。LCAを活用して排出構造を可視化し、エネルギー効率向上や寿命延長といった設計アプローチを実践することで、企業の競争力を高めながら脱炭素社会に貢献することができます。